EPISODE0 ほめて[心]ひらく

◎卓野社長の若手特別表彰式!

繊維メーカー『荒川ファイバー』社長の卓野は、若手社員がみんなおとなしいなと思っていました。世代なのか、キャラクターなのかはわからないけど、何となく元気がない。そんな風に感じていたんです。

特に最近は、会社が少しピンチだったために、みんながかなりがんばって働いてくれたせいか、会社全体に怠慢感があるような気がしていて、不安を感じていました。

若手社員と話をしようと思った卓野社長は、ふと考え思い悩んでしまいました。誰に声をかけようかを迷ってしまったのです。卓野社長は、自分が若手社員の事をほとんど知らずにいる事に自分で驚きました。これはもっと彼らとコミュニケーションを取らないといけないなと感じました。

卓野社長は、彼らをほめる事でコミュニケーションを取る事を思いつきます。早速彼は、各部署の責任者たちに、若手社員たちの情報をあげるように指示しました。

総務部の若手社員・野沢雅子は、ある日突然『社長賞表彰式』の責任者をまかされます。最初は、これはめんどくさいことをまかされたと気が重かったのですが、表彰されるメンバーが自分の同期だったり、同世代だったりしたことで意識が変わりました。

この会社では、彼女の世代はどうしても縁の下の力持ち的なポジションになることが多くなってしまいます。はなやかな業績を収める様々なプロジェクトの責任者は、彼女たちの先輩たちがまかされることが通例だったからです。

表彰理由も野沢をやる気にさせました。

けっして扱いは多くないけど、雑誌やネットなどで話題になり始めたスタートアップファッションブランドとの契約をまとめた営業マンや、業務効率の改善を地道に重ね、ある工場の生産コストを劇的に下げ、人気商品の利益率を向上させた製造部門のメンバー、新生海外ブランドの製品にいち早く目を付け、その製品を独占契約するきっかけを作った調達部門のメンバーなどなど、派手ではないけど、確実に将来の荒川ファイバーのための仕事が選ばれていたのです。

野沢の指揮の下、表彰式は滞りなく行われました。そして、その表彰式ではちょっとしたサプライズが。その表彰式の準備や内容が評価され、その責任者として野沢も表彰されたんです。

この表彰式は、『荒川ファイバー』の若手社員の大きな刺激となりました。
今まで遠い人だった社長が、仲間のがんばりをみてくれていて、それを評価しほめてくれたという事実は、若手社員たちのやる気を大きく改善することに繋がりました。

『荒川ファイバー』社長の卓野は、あの表彰式をきっかけに若手社員たちがなんだか元気になってきたように感じていました。
最近では、各部門から若手社員たちの提案や意見、要望などが部門の責任者から定期的に上がるようになってきました。そうした意見は、卓野社長の経営の意志決定の判断材料に役立てられていきました。

さらに、卓野社長は総務の野沢を中心に若手社員たちとの交流を定期的に持つようになりました。

『ほめる』ということをきっかけに、ずいぶんと会社の様子が変わったな。

卓野社長はそう感じていました。

TOP